この遠征はガリア掌握の一環にすぎませんでしたが、その100年ちかく後の紀元43年にはブリテン島の南部がローマ帝国の属州に組み入れられます。
その36年後の紀元79年、現在のマンチェスターにローマ帝国の前哨砦「マンクニアム(Mancunium)」がつくられます。
その砦の遺跡があるのが、今回ご紹介するキャッスルフィールド(Castlefield)です。
キャッスルフィールド一帯は、マンチェスター市の保存管理区域(後出の地図の赤く囲った部分)になっていますが、ローマ時代の遺跡だけがその理由ではありません。近代産業史、鉄道史上、たいへん重要な場所でもあるからです。
まず、次の地図や写真をご覧ください。
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2014年8月スタッフ撮影 |
すぐに目につくのは運河ですね。
この運河はブリッジウォーター運河(Bridgewater Canal)といい、1761年(日本の宝暦年間。宝暦治水事件の6年後)に世界最初の商業運河として作られました。続いて1779年には最古の運河倉庫も建設され、産業拠点として発達していきます。
クラシック音楽好きの方ならご存知かと思いますが、BBCフィルハーモニック・オーケストラが本拠としている「ブリッジウォーターホール(The Bridgewater Hall)」の名前もここに由来します。(上地図右端)
蒸気機関車発明後の1830年には世界初の旅客鉄道*「リヴァプール・アンド・マンチェスター鉄道(L&MR / Liverpool and Manchester Railway)」が開通し、運河近くのリヴァプール・ロード駅がその終点となります。さらに翌年には世界初の鉄道倉庫が完成します。
*商業鉄道は1825年のストックトン・アンド・ダーリントン鉄道
ちなみに、リヴァプール・ロード駅舎は、現在「マンチェスター科学産業博物館」で保存されています。上のストリートビューでもご覧になれますが、道路沿いの「STATION BUILDING」と書かれた赤レンガの建物が当時の駅舎です。
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2015年8月撮影 |
ローマ帝国と産業革命という2つの世界史的に重要な時代の建造物がまとめて見られる貴重な場所が、このキャッスルフィールドなのです。
それだけにとどまらず、現代とローマ時代のコントラストを楽しめるスポットがありますので、ご紹介してこの記事の締めとしたいと思います。
遺跡前の道路を挟んだ反対側にはもうひとつ修復・復元されたローマ時代の遺跡の一部があり、芝生が張られちょっとした公園になっています。
そこから見た風景がこの写真です。
遺跡のはるか向こうに、近代建築の粋を集めたヒルトンホテル(Hilton Manchester Deansgate)がそびえ立っており、同じ直線上で2つの建築物を対比させて見ることができます。
2000年の時の流れを一つのフレームに納められる絶景ポイント。
おすすめです。是非行ってみてください。
キャッスルフィールド
◎交通機関
メトロリンク「ディーンズゲイト・キャッスルフィールド(Deansgate-Castlefield)」駅
次回はおなじキャッスルフィールド地域にある「マンチェスター科学産業博物館(Museum of Science & Industry / MOSI)」を予定しています。お楽しみに。
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